~台湾駐在員向け~ 海外銀行口座のメリット・デメリット - カントリーリスク分散の第一歩

今回は資産運用の基礎となる「海外銀行口座の保有」についてお話ししたいと思います。

日本在住中は、円建ての資産運用しか持たない方がほとんどです。確かに国内金融機関の利用は便利で手軽ですが、リスク分散の観点から見れば、海外にも資産を持つことが重要です。台湾に駐在すると、給与受取のため、台湾の銀行口座を開設されると思います。これは資産運用の観点から言えば、台湾ドルを保有することでれっきとした通貨リスク分散です。今回は、「カントリーリスク分散」の第一歩と言える、海外銀行口座を持つメリットとデメリットについて解説します。

なぜ海外銀行口座が必要なのか

日本は経済大国ですが、国土が狭く資源に乏しい島国です。そのためさまざまな面で海外に依存する部分が多く、為替リスクや地政学的リスクなど、多くの潜在的カントリーリスクにさらされています。

例えば為替リスクでは、円安が進めば輸入物価が上昇するなど、国民生活に大きな影響を及ぼします。また有事の際は海外からの供給網が止まるリスクもあります。

投資の面でも同様で、日本国内資産に投資を集中させれば、日本のカントリーリスクにすべてをさらすことになります。こうしたリスクを分散するために、海外に資産を持つ必要があるのです。

その第一歩が、海外銀行口座の保有です。海外預金や外貨建て資産運用が海外でできるため、カントリーリスクの分散・低減が可能となります。

海外銀行口座保有のメリット

海外に銀行口座を保有するメリットを書き出してみます。

  1. 外貨建ての資産運用が可能
    海外銀行口座を持てば、外貨建ての預金口座や投資信託などの運用が可能になります。為替変動リスクをヘッジすれば、円安の際の運用資産の目減りリスクを低減できます。
  2. 渡航・駐在時のメリット
    外国での渡航や駐在に備えて現地通貨の口座を持っておけば、急な出費にも対応できます。両替手数料の支払いも不要になります。
  3. カントリーリスク分散
    最大のメリットです。日本国内に全資産を保有するのではなく、複数の国・地域に分散投資ができ、カントリーリスクが分散・低減できます。有事の際の資金避難ルートも確保できます。
  4. 新たな投資機会
    海外口座を持てば、自国では入手困難な投資商品にもアクセスできます。より多様な投資機会を得られるようになります。
HSBC香港

香港はアジアの金融センターとして地位を確立しており、香港に銀行口座を開設する日本人は多いです。その筆頭に挙げられる銀行が「HSBC香港」です。名前は中国っぽいですが、本社はイギリスの欧州最大手のひとつです。開設に香港に出向く必要がありますが、開設後はインターネットバンキングやホットラインでほとんどの取引ができ、使い勝手が良いのが特徴です。日本から最も近いオフショア銀行口座の一つと言えます。

一方でデメリットもある

メリットが多い反面、海外銀行口座の開設・維持には以下のようなデメリットもあります。

  1. 開設が面倒
    現地に渡航せずに郵送で開設できる銀行もありますが、ほとんどの場合は、本人確認のための書類提出や、対面での手続きが必要で開設に手間がかかります。
  2. 維持費用がかかることも
    口座維持に手数料がかかったり、最低残高が課される場合があり、コストがかさみます。遠隔地への渡航費もかかるでしょう。
  3. 外貨運用のリスク
    外貨建て資産は為替変動リスクが伴います。
  4. 海外情勢への影響リスク
    開設した国や地域の政情不安や経済問題などに直接的に影響を受ける可能性があります。
  5. 言葉の問題
    日本語が通じることはほとんどないため、現地語や英語でのやり取りが必要となります。
  6. 制度への不慣れ
    現地の金融制度や商慣行に不慣れなため、トラブルに巻き込まれるリスクがあります。

このように海外銀行口座開設には手間やコストがかかる反面、運用面でのリスクもあります。しかし、グローバルな資産分散のメリットを考えれば、その価値は大きいと言えるでしょう。

口座開設の際の留意点

口座開設を検討する際は、以下のようなことに留意しましょう。

・金融機関の信頼性・安全性/ペイオフなどの政府による保証
・最低預入残高や手数料水準
・対応言語
・渡航の頻度やコストとの兼ね合い
・自身の投資目的や投資スタイルとのマッチング度

日本人がよく開設する国・地域

台湾の銀行は居留証が必須で、台湾に住んでいることが前提条件です。このあたりの制度・ルールは各国・地域により異なります。

例えば香港は、アジアNo.1の金融先進地域ですが、イギリスが本社のHSBC香港(香港上海銀行)は、日本在住者の口座開設を受け入れています。開設には担当者と現地での面談が必須ですが、一度開設できてしまえば、インターネットやホットラインでほとんどの手続きができるようになります。(ただし英語か中国語のみ)またハワイにも日本居住者を受け入れている銀行もあります。

上記に上げました通り台湾以外にも選択肢はありますので、あとはご自身の使い勝手や活用方法によってご選択いただくことになります。

資産運用の選択肢が広がる

このように海外銀行口座の保有には一長一短がありますが、グローバル化が進む中でその重要性は高まり続けています。少しずつでも外貨資産への投資を始め、段階的にカントリーリスクの分散を図ることが賢明でしょう。

海外銀行口座開設は、そうした資産運用の選択肢を広げる、第一歩となります。まずはこの一歩を踏み出し、グローバルな視野を持った資産形成を目指しましょう。

資産運用に関するご質問・ご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

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